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電気料金プラン(電力会社)の乗換え前には「燃料費調整制度」を要チェック

乗り換えのコツ
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電気料金プラン(電力会社)の乗換えを検討する際、
料金プランごとの燃料費調整制度の内容を確認しているでしょうか?

「何それ?難しそうな話だな~面倒くさいな~」と思われるかもしれません。

しかし、少なくとも本記事執筆時点(2022年5月時点)のように、
日本でのメインの発電方式である火力発電に使用される化石燃料(原油・石炭・液化天然ガス)の価格が高騰している状況においては、
乗換え候補先の料金プランの燃料費調整制度の内容を事前確認しておかないと、
「乗換えをしたことで電気料金が高くなった」という予想外の事態になる可能性があります

そんな無駄骨の事態にならないように、
乗換え候補先の料金プランの燃料費調整制度の内容は、
乗換え前に確認しておくことをオススメします。

今回の記事では、その理由を、
燃料費調整制度という仕組みの内容に言及しながら説明します。

※本記事では、「家庭向け」の料金プランにおける燃料費調整制度について言及しています。

※本記事の内容は、本記事執筆時点(2022年5月)の情報に基づくものです(*1)(*2)(*3)(*4)。

(*1)2022年7月16日に、HTBエナジーの燃料費調整制度について最新情報を追記しました。

(*2)2022年9月7日に、特定小売供給約款で定める燃料費調整での値上げの上限に達しているみなし小売電気事業者について、最新情報を追記しました。

(*3)2022年9月24日に、ENEOSでんきの燃料費調整制度について最新情報を追記しました。

(*4)2022年11月1日に、下記③の燃料費調整制度を採用している電力会社の一例リストを追記しました。

 

燃料費調整制度の概要・種類

「燃料費調整制度って何?」という疑問に対して、ザックリ回答します。

燃料費調整制度の概要

燃料費調整制度とは、
「毎月の電気料金を値上げしたり値下げしたりする仕組み」のことです。

この制度が組み込まれている料金プランを契約している場合、電気の使用形態(電気使用量など)が毎月同じでも、一部例外(燃料費調整による値上げの上限到達時など)を除いて、月々の電気料金は毎月異なります。

電気料金に影響を与えない(値上げも値下げもしない=燃料費調整額0円)タイミングも理屈の上ではあり得ますが、実際には滅多に発生しないと思います。

ただし、燃料費調整制度の具体的な内容(細かい点)は、すべての電力会社で共通ではありませんし、同じ電力会社でも料金プランによって異なる場合があります

そのため、皆さんに適用される燃料費調整制度の内容は、皆さんが契約した電力会社の料金プランに応じて様々あります。

 

燃料費調整制度の種類

私が実際に目にした燃料費調整制度は、大別すると、下記の①~③に区分できます。
※専門用語が出てきますが、後で意味を解説しているので安心ください。

① みなし小売電気事業者が特定小売供給約款で定める燃料費調整制度およびそれと同内容の燃料費調整制度
→「燃料費調整による値上げに上限」がある燃料費調整制度

② 上記①の燃料費調整制度から「燃料費調整による値上げの上限」をなくした燃料費調整制度
→上記①よりも、燃料費調整による値上げ額が大きくなる可能性のある燃料費調整制度

③ 上記①や②とは内容が異なる独自の燃料費調整制度
→上記②よりも、燃料費調整による値上げ額が大きくなる可能性のある燃料費調整制度

本記事執筆時点(2022年5月時点)のように、化石燃料の価格が高騰し続けている状況においては

上記①の燃料費調整制度が適用される電気料金プランだと、燃料費調整による電気料金の値上がりが上限値に到達すると、それ以上は値上がりしなくなります。

上記②の燃料費調整制度が適用される電気料金プランだと、燃料費調整による電気料金の値上がりが上限なく続いていきます。

上記③の燃料費調整制度が適用される電気料金プランだと、燃料費調整による電気料金の値上がりが上限なく高騰する可能性が高いです。

 

 参考 : 専門用語解説

みなし小売電気事業者

みなし小売電気事業者とは、電気の小売自由化の前からある、各地域の大手電力会社(旧一般電気事業者)、もしくは各地域の大手電力会社(旧一般電気事業者)の分社化時に小売部門を引き継いだ会社のことで、具体的には次の10社です。

北海道電力(株)
東北電力(株)
東京電力エナジーパートナー(株)
中部電力ミライズ(株)
北陸電力(株)
関西電力(株)
中国電力(株)
四国電力(株)
九州電力(株)
沖縄電力(株)

 

特定小売供給約款

特定小売供給約款とは、経済産業省いわく(*)、「電気の使用者が、規制料金メニューにより、みなし小売電気事業者に対して支払う料金等を定めるもの」とのことです。
(*)経済産業省の2020年3月19日のニュースリリース「新型コロナウイルス感染症の影響を受け、電気料金の支払いなど生活に不安を感じておられる皆様へ」内の記述。

特定小売供給約款の定義(経済産業省)

出典:経済産業省,ニュースリリース,2020年3月19日
https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200319008/20200319008.html

 

東京電力エナジーパートナーの特定小売供給約款(令和元年10月1日実施)の、「1 適用(1)」には「当社が,特定需要に応じて電気を供給するときの電気料金その他の供給条件は,この特定小売供給約款(以下「この供給約款」といいます。)によります。」との記載があり、
「2 供給約款の届出および変更(2)」には「当社は,経済産業大臣の認可を受け,または経済産業大臣に届け出て,この供給約款を変更することがあります。」との記載があります。

特定小売供給約款の定義(東電1) 特定小売供給約款の定義(東電2)

出典:東京電力エナジーパートナー(株),特定小売供給約款(令和元年10月1日実施),1ページ

 

以上の内容から私としては、「特定小売供給約款とは、みなし小売電気事業者が、国(経済産業大臣)から認可または届出による規制を受けている料金プラン(規制料金プラン)で電気を供給するときの、電気料金その他の供給条件を定めた契約条項の総体」と認識しています。

なお、関西電力と中国電力は特定小売供給約款のことを、電気特定小売供給約款と呼んでいます。
※経済産業省の2020年9月11日のニュースリリース「電力会社から特定小売供給約款の変更届出等を受理しました」に掲載されている、関西電力と中国電力の特定小売供給約款変更届出書を参照。

 

① みなし小売電気事業者が特定小売供給約款で定める燃料費調整制度およびそれと同内容の燃料費調整制度

この燃料費調整制度は、
火力発電に使用される化石燃料(原油・石炭・液化天然ガス)の価格変動に応じて、毎月の電気料金を値上げしたり値下げしたりする仕組みであり、
この仕組みによる値上げには上限が設定されています。

詳細は、次の3パターン順に説明していきます。

ⅰ みなし小売電気事業者が特定小売供給約款で定める燃料費調整制度

ⅱ 上記ⅰの燃料費調整制度と同内容の、みなし小売電気事業者が特定小売供給約款「ではない」約款類で定める燃料費調整制度

ⅲ 上記ⅰの燃料費調整制度と同内容の、新電力(*)が約款類で定める燃料費調整制度

(*)新電力とは、みなし小売電気事業者を除く小売電気事業者のことです。

 

ⅰ みなし小売電気事業者が特定小売供給約款で定める燃料費調整制度

全ての特定小売供給約款に共通している燃料費調整制度の内容もありますが、特定小売供給約款ごとに異なる燃料費調整制度の内容(*)もあります。
(*)みなし小売電気事業者ごとに、火力発電所の種類(石油火力・石炭火力・LNG火力)の割合などが異なるためです。

全ての特定小売供給約款に共通している燃料費調整制度の内容は、資源エネルギー庁のwebサイトおよび電気事業連合会のwebサイト(f-2の箇所)をご覧ください。

特定小売供給約款ごとに異なる燃料費調整制度の内容の例としては、基準単価、換算係数(α・β・γ)が挙げられます。

九州電力の特定小売供給約款に定められている「離島ユニバーサルサービス調整」は、燃料費調整から分離させた制度です。

詳細は、九州電力のプレスリリース(2019年2月26日)に添付ファイルとして掲載されている、「(ご説明資料)電気料金(特定小売料金等)の値下げについて」の右肩10ページをご覧ください。

そのため、例えば、
北海道電力の従量電灯B(特定小売供給約款で設定されている家庭向けの規制料金プラン)に適用される燃料費調整制度の内容と、
東京電力エナジーパートナーの従量電灯B(特定小売供給約款で設定されている家庭向けの規制料金プラン)に適用される燃料費調整制度の内容には異なる点があるため、
同じ年月に同じ電気の使用形態(使用電力量)だったとしても、
その年月の燃料費調整額(燃料費調整制度によって電気料金に+もしくは-される金額)は、
北海道電力の従量電灯Bの契約者と、東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bの契約者とで異なります。

 

また、そもそも、それぞれの特定小売供給約款が適用できる(それぞれの特定小売供給約款の規制料金プランが契約できる)地域は限定されています。

例えば、自宅(電気の使用場所)が埼玉県の場合は、
北海道電力の特定小売供給約款は適用することができず、
適用できる特定小売供給約款は東京電力エナジーパートナーのものだけです。

そのため、皆さんそれぞれに適用可能な、みなし小売電気事業者が特定小売供給約款で定める燃料費調整制度は、皆さんの自宅(電気の使用場所)地域に適用可能な特定小売供給約款で定める燃料費調整制度になります。

※例: 北海道電力・東電の特定小売供給約款の規定

北海道約款(適用地域)

出典:北海道電力(株),特定小売供給約款(令和2年10月1日実施),1ページ

東電約款(適用地域)

出典:東京電力エナジーパートナー(株),特定小売供給約款(令和元年10月1日実施),1ページ

 

上記を踏まえた上で、
皆さんの自宅(電気の使用場所)地域に適用される特定小売供給約款を閲覧して、
皆さんそれぞれに適用される「みなし小売電気事業者が特定小売供給約款で定める燃料費調整制度」の具体的内容を確認してみて下さい。

それぞれの特定小売供給約款は、ネット検索で「○○電力 特定小売供給約款」と入力すれば出てきます。

特定小売供給約款で燃料費調整制度について規定されている具体的な箇所は、特定小売供給約款の「契約種別(料金プラン)ごとの”料金”の項目」と、特定小売供給約款の後ろの方にある「別表内の”燃料費調整”の項目」です。

各みなし小売電気事業者のwebサイト上の、「燃料費調整について説明したページ」も参考になると思います。
※例: 東京電力エナジーパートナー 燃料費調整制度とは(低圧)

とはいえ、特定小売供給約款で定める燃料費調整制度の具体的内容を「全て完璧に」理解するには時間がかかり(人によるでしょうが)、各年月の燃料費調整単価は各みなし小売電気事業者のwebサイトで事前公表されるので(*)、
燃料費調整を算定する工程のうち、燃料費調整単価を算定するより前の工程については、大雑把な理解でも大きな支障はないと思います。
(*)例: 東京電力エナジーパートナー 最新の燃料費調整単価のお知らせ

 

注目点としては、
全ての特定小売供給約款に共通している燃料費調整制度の内容として、「燃料費調整での値上げに上限が設定されている」ことです。

これは、化石燃料価格が大幅に上昇したタイミングでの電気料金高騰の抑制を目的にしています。

そして、本記事執筆時点(2022年5月時点)では化石燃料価格が高騰しているため、東北電力・北陸電力・関西電力・中国電力・四国電力・沖縄電力の6社は、特定小売供給約款で定める燃料費調整制度での2022年6月分の燃料費調整で、燃料費調整による値上げの上限達しています

 追記(2022年9月7日) 

みなし小売電気事業者10社(全社)は、特定小売供給約款で定める燃料費調整制度での2022年10月分の燃料費調整で、燃料費調整による値上げの上限に達しています。
※<参考>産経新聞webサイトの記事(2022年8月30日)

電気の使用者にとって「燃料費調整による値上げの上限」はありがたい仕組みです。

 

ⅱ 上記ⅰの燃料費調整制度と同内容の、みなし小売電気事業者が特定小売供給約款「ではない」約款類で定める燃料費調整制度

みなし小売電気事業者が特定小売供給約款「ではない」約款類で定めている(規制料金プランではない料金プラン=自由料金プランの)燃料費調整制度の中には、
特定小売供給約款で定める燃料費調整制度と同内容のものがあります。

ただし、逆説的に言うと、みなし小売電気事業者が特定小売供給約款「ではない」約款類で定めている(自由料金プランの)燃料費調整制度の中には、
特定小売供給約款で定める燃料費調整制度とは違う(燃料費調整による値上げの上限を撤廃した)ものもありますので、注意してください(約款類の規定をよく確認ください)。

また、みなし小売電気事業者が特定小売供給約款「ではない」約款類で定めている(自由料金プランの)燃料費調整制度が、
特定小売供給約款で定める燃料費調整制度と同内容のものから、特定小売供給約款で定める燃料費調整制度とは違う(燃料費調整による値上げの上限を撤廃した)ものに変更される事例も発生しているので、注意してください(電力会社からのお知らせやニュースを見逃さないようにしてください)。
※<参考> 読売新聞オンラインの記事(2022年5月19日)

 

ⅲ 上記ⅰの燃料費調整制度と同内容の、新電力が約款類で定める燃料費調整制度

いわゆる新電力(みなし小売電気事業者を除く小売電気事業者)の中には、
みなし小売電気事業者が特定小売供給約款で定める燃料費調整制度と同内容の燃料費調整制度を定めているところもあります。

例えば、ENEOS株式会社が提供するENEOSでんきのwebサイトには、次の記載があります。

ENEOSでんきwebサイト(燃料費調整)

出典:ENEOSでんきエリア共通版,燃料費調整額,2022年5月28日時点
https://www.eneos.co.jp/denki-kyotsu/charge/fuelcost.html

 

念のため、ENEOS株式会社の「ENEOSでんき約款[関東エリア(低圧)]2020年6月25日実施」の「燃料費調整」の項目に記載されている、燃料費調整による値上げに上限を設定する規定と、
東京電力エナジーパートナーの「特定小売供給約款(令和元年10月1日実施)」の「燃料費調整」の項目に記載されている、燃料費調整による値上げに上限を設定する規定とを見比べると、次の通り内容は同じでした。

<ENEOSでんき約款[関東エリア(低圧)]2020年6月25日実施>

ENEOS約款(燃料費調整)

出典:ENEOS(株),ENEOSでんき約款[関東エリア(低圧)]2020年6月25日実施,48ページ

 

<東京電力エナジーパートナー 特定小売供給約款(令和元年10月1日実施)>

東電約款(燃料費調整)

出典:東京電力エナジーパートナー(株),特定小売供給約款(令和元年10月1日実施),74ページ

 

 追記(2022年9月24日) 

ENEOS株式会社の2022年9月15日のお知らせ「『ENEOSでんき』における燃料費調整額の変更について(2022年11月1日実施)」を見ると、「燃料費調整による値上げの上限」を廃止し、①から、②の燃料費調整制度に変更するようです。

ENEOSでんきの電気の使用者にとっては、スルーしてはいけない(電気の契約先を変更するか真剣に検討すべき)お知らせだと思います。

個人的な見解としては、燃料費調整による値上げに上限が設定されている燃料費調整制度を、規制料金プランではない料金プラン(=自由料金プラン)で採用していることは、電力会社が自発的にリスクを引き受けて電気使用者を保護していることになるので、良心的だと思います

 

② 上記①の燃料費調整制度から「燃料費調整による値上げの上限」をなくした燃料費調整制度

具体例を紹介した後、上限がないことによる影響について説明します。

みなし小売電気事業者での例

先述した通り、みなし小売電気事業者であっても、特定小売供給約款「ではない」約款類で定めている(自由料金プランの)燃料費調整制度の中には、
「値上げの上限」があるものと、
「値上げの上限」がないものがあります。

例えば、九州電力のwebサイトには、次の記載があります。

九州電力webサイト(燃料費調整)

出典:九州電力,燃料費調整制度について,2022年5月28日時点
https://www.kyuden.co.jp/rate_adj_other_2.html

 

新電力での例

新電力の中にも、①の燃料費調整制度から「燃料費調整による値上げの上限」をなくした燃料費調整制度を定めているところがあります。

例えば、HTBエナジーのwebサイトには、次の記載があります。

HTBエナジーwebサイト(燃料費調整)

出典:HTBエナジー,燃料費調整額,2022年5月28日時点
https://htb-energy.com/guide/fuelcost.html

 追記(2022年7月16日) 

HTBエナジー株式会社の2022年7月1日のお知らせ「2022年9月1日付けにて『たのしいでんき約款』を改訂いたします。」を見ると、②から、③の燃料費調整制度に変更するようです。

HTBエナジーの電気の使用者にとっては、スルーしてはいけない(電気の契約先を変更するか真剣に検討すべき)お知らせだと思います。

 

上限がないことによる影響

②の燃料費調整制度は、①の燃料費調整制度から「燃料費調整による値上げの上限」をなくしているので、火力発電に使用される化石燃料の価格が上昇すればするほど電気料金が高くなることになり、①の燃料費調整制度よりも値上げ額が大きくなる可能性があります

そして、先述した通り、本記事執筆時点(2022年5月時点)では化石燃料価格が高騰しているため、
東北電力・北陸電力・関西電力・中国電力・四国電力・沖縄電力の6社は、特定小売供給約款で定める燃料費調整制度での2022年6月分の燃料費調整で、燃料費調整による値上げの上限に達しています。

 追記(2022年9月7日) 

先述した通り、みなし小売電気事業者10社(全社)は、特定小売供給約款で定める燃料費調整制度での2022年10月分の燃料費調整で、燃料費調整による値上げの上限に達しています。

そのため、②の燃料費調整制度が適用されている電気使用者の中には、①の燃料費調整制度が適用されている電気使用者よりも、燃料費調整による値上げ額が高くなっている人が実在します。

 

ただし、電気料金の内訳には、燃料費調整額以外にも、基本料金や電力量料金などがあるので、
燃料費調整による値上げの上限に達している状況でも、
①の燃料費調整制度が適用されている料金プランよりも、電気料金(合計金額)が安くなる、②の燃料費調整制度が適用されている料金プランはあり得ます。

実例について、料金シミュレーションをしながら説明します。

 

【料金シミュレーション1】

四国電力の「従量電灯A」(①の燃料費調整制度が適用されている料金プラン)と、
HTBエナジーのたのしいでんき「PRIMEプランPRIME四国 従量電灯A」(②の燃料費調整制度が適用されている料金プラン)との、
2022年6月分の(四国電力の①の燃料費調整制度では燃料費調整による値上げの上限に達しているタイミングでの)電気料金を比較しました。

料金の試算条件は、次の通りです。

四国電力の試算については、四国電力の2022年4月27日のプレスリリース「2022年6月分電気料金の燃料費調整について」に記載されている「3.従量電灯の平均的なモデルへの影響」の内容を用いました(念のため四国電力の「特定小売供給約款(2019年10月1日実施)」の規定に基づきハンド計算もしました)。

HTBエナジーの試算については、四国電力の上記プレスリリースで使用されている試算条件(使用電力量260kWh・燃料費調整額および再生可能エネルギー発電促進賦課金を含む)を用い、「たのしいでんき約款 低圧(2021年10月19日改正)」および「たのしいでんきプラン別説明書PRIMEプラン(2021年10月19日実施)」の規定に基づきハンド計算しました。

結果としては、
燃料費調整額は当然に四国電力の方が安いですが、
電気料金(合計金額)はHTBエナジーの方が安くなりました。

具体的には、
四国電力の燃料費調整額は、燃料費調整による値上げに上限があることから662.95円で、
HTBエナジーの燃料費調整額は、燃料費調整による値上げに上限がないことから795.54円となり、
燃料費調整額は四国電力の方が132.59円安い結果となりました。

四国電力の電気料金(合計金額)は7,915円で、
HTBエナジーの電気料金(合計金額)は7,782円となり、
電気料金(合計金額)はHTBエナジーの方が133円安い結果となりました。

 

【料金シミュレーション2】

ENEOS のENEOSでんき「四国Aプラン」+「にねんとく2割」(①の燃料費調整制度が適用されている料金プラン)と、
HTBエナジーのたのしいでんき「PRIMEプランPRIME四国 従量電灯A」(②の燃料費調整制度が適用されている料金プラン)との、
2022年6月分の(ENEOSの①の燃料費調整制度では燃料費調整による値上げの上限に達しているタイミングでの)電気料金を比較しました。

ENEOSの試算については、四国電力の上記プレスリリースで使用されている試算条件(使用電力量260kWh・燃料費調整額および再生可能エネルギー発電促進賦課金を含む)を用い、「ENEOSでんき約款[四国エリア(低圧)] 2020年6月25日実施」および「割引契約約款(にねんとく2割)2020年6月25日実施」の規定に基づきハンド計算しました。

HTBエナジーの試算については、四国電力の上記プレスリリースで使用されている試算条件(使用電力量260kWh・燃料費調整額および再生可能エネルギー発電促進賦課金を含む)を用い、「たのしいでんき約款 低圧(2021年10月19日改正)」および「たのしいでんきプラン別説明書PRIMEプラン(2021年10月19日実施)」の規定に基づきハンド計算しました。

結果としては、
燃料費調整額は当然にENEOSの方が安くなり、
電気料金(合計金額)もENEOSの方が安い結果となりました。

具体的には、
ENEOSの燃料費調整額は、燃料費調整による値上げに上限があることから662.95円で、
HTBエナジーの燃料費調整額は、燃料費調整による値上げに上限がないことから795.54円となり、
燃料費調整額はENEOSの方が132.59円安い結果となりました。

ENEOSの電気料金(合計金額)は7,767円で、
HTBエナジーの電気料金(合計金額)は7,782円となり、
電気料金(合計金額)はENEOSの方が15円安い結果となりました。

つまり、ENEOSは燃料費調整による値上げに上限があることで、HTBエナジーよりも電気料金(合計金額)が安くなったことになります。

逆説的に言うと、HTBエナジーは、燃料費調整による値上げに上限がないことで、ENEOSよりも電気料金(合計金額)が高くなったことになります。

このように、電気料金プランごとの料金比較シミュレーションは、燃料費調整による値上げの上限に達している状況だと、比較する料金プランごとに燃料費調整制度の内容が違うと、ややこしいことになります。

 

③ 上記①や②とは内容が異なる独自の燃料費調整制度

概要・具体例・懸念点の順で説明していきます。

概要

この燃料費調整制度は、
日本卸電力取引所(略称:JEPX)での電気の市場価格に応じて、電気料金を値上げしたり値下げしたりする仕組みです。
※<参考:日本卸電力取引所について>EnergyShiftの記事(2019年6月22日)

この燃料費調整制度が適用されている料金プランは、いわゆる「市場連動型の料金プラン」の一種です。
※<参考> 経済産業省のニュースリリース(2021年1月29日)内の、1の”なお書き箇所”を参照。

市場連動型の料金プラン(経済産業省)

出典:経済産業省,ニュースリリース,2021年1月29日
https://www.meti.go.jp/press/2020/01/20210129003/20210129003.html

 

個人的には、この燃料費調整制度は、その内容からして「電源調達調整制度」と言い換えた方が実態に即した名称になると思います。
※<参考>電気新聞webサイトの記事(2022年5月26日)

ENECHANGE株式会社(*)のプレスリリース(2022年4月14日)を見ると、この燃料費調整制度が誕生した背景・理由が分かります。
(*)電気料金・ガス料金の比較サイト(エネチェンジ)を運営

そして、このENECHANGEのプレスリリースを見ると、今後は、上記①や②から、③の燃料費調整制度に変更する電力会社が増えていくことが予想されます。

 追記(2022年7月16日) 

先述した通り、HTBエナジーの「たのしいでんき」も、②から、③の燃料費調整制度に変更するそうです。

 

具体例

この燃料費調整制度の具体例としては、
株式会社グランデータが展開する”ONEでんき「フリープラン」”が挙げられます。

以下のお知らせなどを見ると、
燃料費調整額とは別に、「燃料費調整額の追加調整」という名称で、日本卸電力取引所(略称:JEPX)での電気の市場価格に応じて電気料金を高くしたり安くしたりする仕組みを新たに追加するそうです。

【重要】約款変更のお知らせ(2022年3月31日)
約款変更の内容に関する補足説明(2022年4月28日)

なお、先述した通り、私としては、グランデータの「燃料費調整額の追加調整」は、その内容からして「電源調達調整」という名称にした方が実態に合っているように感じます。

 

 追記(2022年11月1日) 

エネチェンジのwebサイトに、電源調達調整費(③の燃料費調整制度)を導入している/導入予定の電力会社の「一例」として、次のリストが掲載されています。

楽天エナジー(楽天でんき)など、知名度のある電力会社も見受けられます。

電源調達調整費を導入済みの新電力一例(エネチェンジ)

出典:エネチェンジ,
電源調達調整費とは?独自燃調を扱っている新電力・電力会社はどこ?,
2022年11月1日時点

https://enechange.jp/articles/power-procurement

 

 

懸念点

③の燃料費調整制度の懸念点は、
「本記事執筆時点(2022年5月時点)のように火力発電に使用される化石燃料の価格が高騰する局面等においては、上記②の燃料費調整制度よりも燃料費調整(独自の追加調整等を含む)による値上げ額が高くなる可能性があること」
です。

高騰する電気の調達・発電コストを電気料金に反映して回収するために、電力会社が③の燃料費調整制度を採用することは事業継続のためには仕方のないことだと思います。

しかし、③の燃料費調整制度を採用する電力会社は電気使用者に対して、「当社は③の燃料費調整制度を採用していて、化石燃料の価格が高騰する局面等においては、燃料費調整(独自の追加調整等を含む)による値上げが①や②の燃料費調整制度よりも高くなる可能性がある」という趣旨のストレートな言い回しによる説明を、電気の契約をする前や燃料費調整制度を変更する前に明示的にするべきだと思います。

このストレートな言い回しによる説明を、電気の契約をする前や燃料費調整制度を変更する前に明示的にしないと、電気料金制度に関心の低い電気使用者(一般消費者の大半)は、③の燃料費調整制度の内容を正しく理解・認識できないまま電気の契約をしたり契約を継続してしまうリスクがあると思います。
※<参考> 電気新聞webサイトの記事(2022年4月11日)

 

まとめ

以上が、私が調べて理解した(認識した)燃料費調整制度の内容です。

燃料費調整制度と一口に言っても、各電力会社の各料金プランによって内容が異なることを理解いただけたと思います。

このことから、少なくとも本記事執筆時点(2022年5月時点)のように、火力発電に使用される化石燃料の価格が高騰している状況においては、
我々電気使用者が料金プラン(電力会社)を乗換える際には、乗換えをする前に、
現在契約している料金プランの燃料費調整制度の内容と、乗換え候補先の料金プランの燃料費調整制度の内容とが、同じなのか異なるのかを約款類等を見ることで確認して、
異なるのであれば、その違いによって燃料費調整による値上げ・値下げにどのような違いが出てくるのかを試算(シミュレーション)するなどして確認するべきだと思います。

なお、上記のエネチェンジ等の電気料金の比較サイトを利用する場合は、その比較サイトで、料金プランごとの燃料費調整制度の違いを適切に反映したうえで電気料金の試算(シミュレーション)をしてくれるのかも確認するべきだと思います。

例えば、燃料費調整額を抜いて電気料金の試算(シミュレーション)をしている比較サイトでは、電気料金の試算(シミュレーション)において料金プランごとの燃料費調整制度の違いを反映できないので、
現在契約している料金プランの燃料費調整制度の内容と、乗換え候補先の料金プランの燃料費調整制度の内容とが異なる場合は、その比較サイトでの電気料金の比較結果(差額)は、当てにならない場合があると思います。
※具体例としては、先述した「ENEOSの料金プランと、HTBエナジーの料金プランとの、電気料金(合計金額)の比較」において、燃料費調整額を抜いて電気料金の試算(シミュレーション)をしてしまうと、電気料金の比較結果が逆転してしまいます(HTBエナジーの料金プランの方が電気料金が安い結果となります)。

面倒くさいとは思いますが、少なくとも本記事執筆時点(2022年5月時点)のように、火力発電に使用される化石燃料の価格が高騰している状況においては、
少なくとも上記の内容を確認しないと、「料金プランの乗換えをしたことで電気料金が高くなった(=乗換えをしないままの方が電気料金が安かった)」という予想外の事態になる可能性があります。

電気料金プランアイキャッチ
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今回は以上になります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!